連載企画
相続税豆知識

第17回 相続と家族信託(5) 家族信託の活用事例〜子供への贈与編〜

 こんにちは、岸本です。
 今回は自分の子供へ贈与を行う場合の家族信託の活用事例をご紹介します。
将来自分の子供が住宅を取得するときに、その資金を負担しようと考えておられる方は少なからずいらっしゃると思います。しかしながら、実際にその時になってみると自分の判断能力が衰えてしまっている可能性も否定できません。もし、判断能力が衰えてしまって、成年後見人が選任されていた場合、原則的に自分の財産を贈与することはできません。成年後見制度は判断能力の衰えた自分自身を保護するための制度であるため、自分自身以外の者に財産を渡すことは原則としてできないのです。だからと言って今のうちに贈与をしてしまうと住宅取得時には使い果たして残っていないかもしれません。
 そこで、信託を活用する方法が提案されます。家族構成は父、長男、次男です。長男は将来自宅を引き継ぐ予定で、次男が住宅を取得する予定であったとします。父は長男と次の信託契約を締結します。

委託者兼受益者:父

 受託者:長男

 信託財産:預金の一部

 目的:次男住宅取得時に次男へ受益権の一部を交付

このような契約にしておきますと、父の判断能力が衰えても、預金の管理をしているのは長男なので、次男が住宅を取得するときに長男の判断で住宅取得資金を交付することができるのです。
また、信託財産を預金の一部としておくことで、父が実際に判断能力が衰えて成年後見制度を適用することとなった場合に、残りの預金を父自身のために成年後見人が活用することとなります。
このように、信託契約だけでなく、成年後見制度と併用することで、それぞれの利点を生かした活用の方法を選択できることとなるのです。
以上、相続税豆知識第17回でした。
 次回は高齢者福祉信託についてお伝えします。