連載企画
相続税豆知識

第16回 相続と家族信託(4) 家族信託の活用事例〜オーナー編〜

 こんにちは、岸本です。
 
今回は企業オーナーが家族信託を活用する事例をお伝えします。

会社の経営が順調で企業価値が増加している場合、オーナーは事業承継のことも考えているはずです。ただし、後継者がまだ若い場合は、経営を任せるのはまだ先のことと考えておられるオーナーもいるでしょう。株の価値が今後上昇していく前に後継者に株を贈与したい。しかし、後継者が議決権を行使して自分の意思に反する経営をするかもしれない。

 そこで信託の登場です。長男に株を贈与した後、長男との間で次の信託契約を締結します。

 委託者兼受益者:後継者
 受託者:オーナー
 信託の目的:議決権の行使
 終了事由:オーナーの死亡

この契約によりオーナーは後継者に株を贈与した後も会社の管理を行うことができます。受益者である後継者はその株から発生する利益=配当を受けることができます。そしてオーナーが死亡したら信託が終了するため、その時に株は完全に後継者に承継されることになるのです。また、オーナーの生前に後継者に経営を任せられるようになったら信託契約を合意解除し、後継者に所有権を取得させることも可能です。

 さらに、株を贈与することに抵抗がある場合には自分を委託者兼受託者とし、後継者を受益者とする自己信託の方法を選択することもできます。

 前者の信託契約の方法を選択する場合は贈与時に贈与税課税、後者の自己信託の方法を選択する場合は信託契約時に贈与税課税されます。

 以上、相続税豆知識第16回でした。次回は子供への贈与を行う場合の活用事例についてお伝えします。